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うらろじ48本目富士吉田市 舟久保織物

長く大切に使っていただける傘を求めて

当館がある山梨県富士吉田市は歴史あるハタオリの街。その歴史は深く、なんと967年に「延喜式(えんぎしき)」という書物に初めて富士吉田の織物が登場したのが最も古い記録で、少なくとも1000年以上の歴史があるとされております。甲斐絹や郡内織物の名で親しまれ、明治時代に入ると『織物の街』として発展。現在も伝統的な技術で織物を作る工場が市内随所に残っており、織機(しょっき)の心地よい音が鳴り響きます。

 今回のうらろじ探訪では、市内に残る機織業の中でも"ほぐし織"という特殊な技法を継承する富士吉田で唯一の工房「舟久保織物」さんをご紹介させていただきます。ほぐし織で生み出される独自の風合いと魅力、そしてその伝統を受け継ぎ後世に伝えていく為の試みについてお話を伺いました。

 舟久保織物さんの創業は大正13年頃。現在、3代目を担っているのが舟久保勝さんです。1代目にあたる勝さんのお祖父さんが創業した当初は、裏地を織っていたそうですが、その後傘生地やネクタイ生地に徐々に転換していき、1980年頃から本格的にほぐし織の傘生地を織り始めます。
 ほぐし織とは、まずたて糸だけに柄を付けてから織る技法。そもそも織物というのは縦に並んだたて糸に、よこ糸を直角に交わらせていくという仕組みであることは多くの方がご存知かと思いますが、ほぐし織の場合は、まずは糸がバラバラにならないよう、たて糸に5cmごとに1本という荒い間隔でよこ糸を通す仮織りという作業を一度施し、その生地にシルクスクリーンを使ってハンドプリントを行い柄を付けてから、仮織りした糸を1本1本"ほぐし"ながら抜いて、たて糸のみが並んだ状態に戻し、改めて本織りで生地に仕上げます。仮織りと本織りの2度の織り作業がある上、型を使って染める絵付け作業も加わる為、通常の織物より倍近い手間暇のかかる技法です。織り上がった生地は、生地プリントとの違いが一目瞭然。柄の輪郭がかすれ、ぼかしたようなムラができる為、柔らかく温かみのある柄に仕上がります。以前は絵付け専門の職人さんがいらっしゃったそうですが、だんだんとできる会社がなくなっていき、ほぐし織を続ける為に舟久保織物自社内に付け場を設備したのが2015年。織るだけでなく、染めまでこなす舟久保さん。その胸の内には、ほぐし織の技法を残し、後世に伝えていきたいという熱い想いが垣間見えます。

 ほぐし織の歴史を紐解いていくと、その原型は最も高価で手間のかかると言われる織物「絣(かすり)織」とのこと。18世紀後半にフランスのリヨンにおいて開発されたのが始まりとされます。あのマリー・アントワネット王妃など王侯貴族もドレス生地で愛用していたと言われる織製法です。それが日本に伝わったのは明治40年頃。織物の産地だったここ富士吉田にも、傘生地にほぐし織を施そうと技術が伝えられたそう。

長い年月を偲ばせる貴重な織機が並ぶ工場内
たて糸のみに柄を付ける付け場
ハンドプリントで行います
染めあがった後は、"ほぐし"ながら手作業で仮織りのたて糸を抜きます
手前がほぐり織り、奥が生地プリント

 古い歴史を持つほぐし織ですが、舟久保織物さんでほぐし織をはじめたのは、舟久保勝さんの代からです。「今も試行錯誤の連続です」と語る舟久保さん。ほぐし織の魅力をより多くの人に知ってもらい広めていく為に、現在、傘生地だけに限らず、絹や綿、そして麻など様々な新しい素材を使用してストール等の他分野の商品化にも挑戦しています。絹は長繊維であるのに対し、綿や麻は1本ずつの繊維が短い短繊維の為、細い糸で織ろうとするとすぐ切れてしまい織物に使用するのは難しいのだそう。特に麻素材は湿度管理が大変重要で、ある程度湿っている状態で織らないと切れてしまう一方で、湿り過ぎているとほぐしの色・柄がにじみ過ぎてしまうという扱いが非常に難しい繊維です。これまでもデザイナーさんから依頼や提案をされる度に新しい素材について勉強をしながら挑戦と失敗を何度も繰り返し、一つの商品として完成させるまでに何年もの歳月を費やしているとのことで、改めて織物の奥深さを知らされました。
 今回の取材の中で拝見させていただいた試作品には3層織のストールも。この3層織りは低速のシャトル織機(※下部参照)を使うからこそできる織り方。ただ単に生地が3層になっているというだけでなく、層ごとに色などが異なるにも関わらず、それを一度の織りで作っているというから驚きです。

※【シャトル織機ってなーに?】
生地を織る機械は織機と呼ばれ、①「よこ糸を通す為のシャトルがある"シャトル織機"」と②「シャトルを使わない"シャトルレス織機"」があります。近年生産される生地の多くはシャトルレス織機によるもので、コンピューター制御により高速&自動でよこ糸を運ぶため生産効率が高く表面が均一でツルツルとした仕上がりになるのが特徴です。一方、シャトル織機は低速度でしか織ることができず、また工程において職人の手作業を必要とする為、シャトルレス織機に比べると非効率的な織機です。しかしながら、たて糸にもよこ糸にも負担をかけないよう、ゆっくりと時間をかけて織ることで表面に凹凸感のあるふっくらとして温かみのある風合いの生地が生まれます。

 このシャトル織機は、手織りと同じ原理の織り機。ゆっくり丁寧に1本の糸を往復させることで織るシャトル織機なら、両端ギリギリまで生地として使用できる為、生地の「耳」ができ、切れ端がありません。つまりはほどいていくとよこ糸は1本の糸で繋がっているということ。傘で比較するとより分かりやすいかと思うので、ぜひ左の画像をご覧ください。左側が舟久保織物さんの傘。右側が一般的な傘。一般的な傘は、よこ糸を載せているだけなので、糸が抜けてしまわないよう耳部分が折り返されて裁縫されておりますが、舟久保織物さんの傘を見るとその耳部分がないことが分かります。裁縫された耳がないことでスッキリしたデザインの傘になりますね。シャトル織機を使うことで、織り上がるまでの速さは遅く時間はかかるとのことですが、ここにも舟久保織物さんのこだわりが見えます。

 とても高度な技術を要する織物の世界。舟久保さんの頭の中では、1本1本どこにどの糸が来るのか糸の絡まりあい方を計算され、加えてこれまでに培ってきた経験で得た素材ごとの密度や織り組織に関する情報が詰まっているので、実際に織機を動かす前から脳内で織りの作業が始まっていると言っても過言ではありません。いざ織ってみると頭で考えていた仕上がりとは全く異なる・・・なんてこともあるそうですが、『そういった失敗から新たに生まれる発見もある』、『だからこそ物つくりは楽しい』と笑顔を見せてくれる舟久保さんの表情からは、内に秘める職人魂を感じました。
 職人さんでありながらも、もっとこの貴重な技法をより多くの人に認知していただけるよう、これからは作るだけではなく、"ほぐし織について"・"織物について"を伝えていくことも大切だと感じているそう。
 その一環として、各機織屋さんが運営するオープンファクトリー(工場見学や商品販売、ワークショップ)という企画に参加されたり、東京造形大学の学生さんとアイデアを出し合っての商品作りや、卒業生とのデザイン契約をする等、若い人たちを巻き込みながらの情報発信、製品企画作りにも積極的に取り組んでいます。

 私たち消費者は、普段の生活で完成された物だけを見て商品を購入していますが、その商品が販売されるに至るまでの過程には、多くの人の思いが吹き込まれていることを今回改めて実感しました。当サイトへ紹介させていただいたことで、少しでも情報発信の一端を担うことができたら嬉しい限りです。
 舟久保織物さんの傘は、富士吉田市ふるさと納税への返礼品としても採用されております。また、当館通販サイト「お甲斐ものナビ」サイト内でも舟久保織物さんの商品を販売中。他にはない柔らかな表情のほぐし織の傘☂をぜひチェックしてみてください。

舟久保織物さんの傘の一例商品はこちら>>>

2020年1月25日

※記事の内容は取材当時のもので現在とは異なる場合があります。
最新の内容につきましては、お客様ご自身でお問い合わせの上、ご利用いただきますようお願い致します。

様々な素材で織り上げた試作品のストール
細い麻で織る時は糸が切れないよう繊細な湿度管理が大切
左:舟久保織物さんの傘 右:一般的な傘
柔らかな表情が特徴のほぐし織の傘
「桜吹雪」シリーズの黄色。雨の日も、明るい気分にしてくれそう♪

富士吉田市 舟久保織物

山梨県富士吉田市小明見2-20-18

TEL:0555-22-2684

営業時間
定休日 土・日・祝
駐車場 あり

鐘山苑から車で約10分。
公式HP
舟久保織物

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