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うらろじ56本目甲州市 丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイン)

日本ワインの歴史と共に

2023年に当館で開催した「山梨ワインと美食と音楽の夕べ」。
このイベントを通して、山梨が誇る数種類のワインと共にお食事&生演奏をお楽しみいただくことができました。
その際、ワインナビゲーターとして登場いただいたのが、日本ワインの代表とも言えるルバイヤートの生産者であり山梨ワイン界の巨匠・大村春夫さんです。
今回のうらろじ探訪では、その大村さんが社長を務める丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイナリー)を紹介させていただきます。

丸藤葡萄酒工業がある山梨県勝沼町は、大菩薩連峰と御坂山塊に囲まれた甲府盆地の東端。みなさんご存じの通り、ぶどう栽培に適した条件を備える日本有数の産地として有名です。山梨県勝沼町と聞けば、"ワインの産地"というイメージを定着させたワイナリーの一つが、今回取材をさせていただいた丸藤葡萄酒工業さんです。

丸藤葡萄酒工業の歴史は130年以上と長く、日本ワインの歴史と言っても過言ではありません。丸藤葡萄酒工業のワインとの関わりは、大村さんの高祖父大村忠兵衛の代にまで遡ります。元々地主で養蚕業も営んでいた大村家ですが、江戸から明治に時代が代わり、時の維新政府、大久保利通、伊藤博文等が殖産興業政策を強く推進します。山梨にはぶどう栽培とワイン醸造があったため、明治10年(1877年)大日本山梨葡萄酒会社(通称:祝村葡萄酒会社)から二人の青年・土屋龍憲と高野正誠をフランスに派遣してワイン造りを学ばせます。その大日本山梨葡萄酒会社に大村忠兵衛さんが出資をしておりました。その後、忠兵衛さんの長男大村治作さんが1890年自宅の庭に小さな葡萄酒醸造場を作り創業したのが始まりです。

「ルバイヤート」の名前は、1954年に詩人・日夏耿之介がワイナリーを訪れた際、ブランド名を考えて欲しいとお願いしたところペルシャ最古の四行詩集から名付けたそう。日夏氏から届いた命名のお手紙は、ワイナリー見学コースのギャラリーに展示されております。親子代々でワイン造りに携わっている大村家。現在の大村春夫社長がワイナリーの四代目となります。

丸藤葡萄酒工業という社名にも、その歴史の足跡は残されています。
「丸藤」は地元地域である藤井の名を背負った昔からの屋号と、大村家の家紋が下がり藤であることから付けられた名前。"丸の中に藤"をデザインしたマークが、ワイナリーの象徴として、貯蔵庫の一つにあしらわれています。

大村春夫氏は、東京農業大学卒業後、国税庁醸造試験所やフランスのボルドー大学等でワイン造りを学び、日本に欧州系品種栽培や垣根栽培を取り入れた先駆者です。
帰国した当時、日本を代表する固有品種の甲州種は「棚栽培」が当たり前だったのですが、フランスから取り寄せたカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ等の欧州系品種で「棚栽培」を試みても満足いくものが得られませんでした。
大村さんは1990年の丸藤葡萄酒工業創業100周年を目前にある大きな決断をします。
同じ勝沼で「垣根栽培」に着手していたマンズワインさんのレインカット栽培(垣根専用の雨除け栽培システム)を導入することで、丸藤葡萄酒工業でもヨーロッパと同じ「垣根栽培」への取り組みを始めたのが1989年。収穫時期に雨の多い日本では成功しないと言われ続けてきた栽培方法でした。それから三十余年。今でも果粒に玉割れが起こるなどのトラブルは避けては通れないとのことですが、「垣根栽培」で育てたシャルドネやプティヴェルドなど欧州系品種のぶどうで安定してワインがつくれるようになるまでには、幾多の苦労と工夫を重ねてきたことが大村さんのお話から手に取るように分かります。

現在では、それぞれの栽培方法のメリット・デメリットを踏まえて、「垣根栽培」と「棚栽培」の両方でぶどう栽培をされています。日本の風土(テロワール)を活かしつつ、欧州系品種だけに限らず、伝統の辛口甲州種にもこだわり、ぶどう栽培から醸造まで、常に新しいことに挑戦しながら"世界に誇る日本のワイン"を目指し精力的にワインづくりに取り組んでいます。

2023年の当館イベントで使用させていただいたルバイヤートワイン6種
古民家を再生した趣のある社屋(事務所、売店、ゲストルーム)
ギャラリーには日夏耿之介さんから届いた貴重なお手紙
垣根仕立てのぶどう樹は壮観
たわわに実るシャルドネ

ワイナリー一帯の敷地には、貯蔵庫、仕込み場、醸造設備、熟成庫 などがあり、事前に予約することで土日祝日には見学することが可能です。
今回は社長自ら各施設を案内していただき、伝統も大切にしながらも新しいことにも挑戦する大村さんの美学が垣間見えました。
どれも歴史・魅力が満載で、全ての施設をご紹介したいところですが、今回はその中のいくつかをご紹介します。

まずは、2015年に完成した熟成・貯蔵庫「紅葉蔵(もみじぐら)」。こちらは、なんと10万本もの瓶が貯蔵できる広さ。適切な温度や湿度が保たれる為、収穫時期には、収穫されたぶどうの一時保管場所としても活躍しています。「紅葉蔵」という名前は、この蔵を建設する際、どうしても周囲に茂っていた紅葉の木の枝を切らなければならなかったことから、その紅葉への想いを込めて名付けられたそう。

2020年に完成したのが、R棟(仕込み場&貯蔵庫)。130周年記念事業の一環で建設された建物です。訪問したこの日は仕込みシーズンではないので、選果台や除梗破砕機等は綺麗に片付けられておりましたが、こちらでぶどうの梗を取り除いて皮に傷をつけたものをポンプで搾り機に送り込むことによって、11トンものぶどうから2時間半ぐらいかけてジュースを搾るという作業が行われます。

翌年2021年には、繭型コンクリートタンクを日本で初めて導入。野生酵母で発酵させたぶどうをこのタンクで熟成させることにより、オーク樽やステンレスタンクで醸造したワインに比べぶどう本来の風味が活かされるそうです。現在は、オレンジワインの醸造にこの繭型コンクリートタンクが活躍しています。
繭型の緩やかな曲線が自然対流を生み、まろやかになると聞くと、一度このタンクを使用してできたワインを飲んでみたくなりますね。元々大村家が養蚕業を営んでいたという歴史に着想を得て設計されたというお話を伺い、そのユニークな試みも素敵だなと感じました。また、2024年には、23基のステンレスタンクを導入する等、良いと思った物は積極的に取り入れています。

新しい設備の一方で、歴史を感じる地下貯蔵庫も健在。階段を下りて貯蔵庫内に入ると、自然が生み出すひんやり感を体感できます。樽の側板で造られたオシャレなシャンデリアが照らす室内では、毎年春にはコンサート会場(蔵コン)としても利用されます。蔵コンを始めたのは、38年前。この部屋全体が、コンクリートの塊なので音が大変響くそうですが、200名ぐらい人が入ると衣服が音を吸収してくれてちょうど良い音を奏でてくれるそう。過去には押尾コータローさん、尾崎紀世彦さん、アコーディオンのCobaさん等、名だたるアーティストが出演しています。
まだワインが今のように日本国内で売れていない時代に、蔵を使って情報発信をしようということで生まれた「蔵コン」。ここでも大村さんのワインに対する愛情とその良さを多くの人に知ってほしいという強い想いがうかがえます。

地下貯蔵庫よりも更に古い1959年~1961年に造られたと言われるコンクリートのタンクは、この小部屋一つ一つが当時コンクリートの発酵槽として使用していたというので驚きです。壁には酒石が付着しており、肉眼で見るとラメのようにキラキラを光るのが分かります。中に入るとほのかにぶどうの香り。現在は、各部屋の側面に穴を空けて全ての部屋を通路として繋いでおります。両サイドにはワインボトルがぎっしりと並んでおり瓶貯蔵庫になっていますが、まるでタイムスリップしたかのように当時の面影を現在に残しており、大変貴重な建物です。出口の扉には"ワインの四季"を表した素敵なステンドグラス。こちらはジブリ美術館のステンドグラスを手掛けた作家さんが手掛けたそうです。これもまた見学に行かれた際には注目して欲しいポイントです。
明治時代に建てられた土蔵造り2階建の旧醸造蔵と共にこの発酵タンク(瓶貯蔵庫)は、2018年に国の登録有形文化財にも登録されており、ワイナリーの歴史に重みを増しています。

長く続く伝統と人との繋がりを大切に守りつつ、技術刷新への情熱も絶やさない丸藤葡萄酒工業さん。
間違いなく日本ワインを代表するワイナリーの一つであり、これからも人とワインが織りなす素敵なストーリーを生み出してくれそうです。
何回も足を運んでみたくなる...そんな素敵なワイナリーさんでした。

2026年6月26日

※記事の内容は取材当時のもので現在とは異なる場合があります。
最新の内容につきましては、お客様ご自身でお問い合わせの上、ご利用いただきますようお願い致します。

熟成・貯蔵庫「紅葉蔵(もみじぐら)」
可愛らしいフォルムの繭型コンクリートタンク
年に一回、蔵コンが開催される地下貯蔵庫
歴史を感じることができる発酵タンク(瓶貯蔵庫)
"ワインの四季"を表した素敵なステンドグラスにも注目♪

甲州市 丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイン)

TEL:0553-44-0043

営業時間 9:00~16:30
定休日 年末年始
駐車場 あり

鐘山苑から車で約45分。
山梨県甲州市勝沼町藤井780
公式HP:丸藤葡萄酒工業株式会社(ルバイヤートワイン)

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